人生最後の瞬間がせまりました。末期の水をとらせなければなりません。末期の水または死水というのは、臨終近い人の口をしめしてあげる水のことです。新しい筆か、箸の先に脱脂綿をまきつけて白い糸でしぼり、それに水を含ませて、唇を軽くうるおしてあげます。むりに箸を唇の中にさしこむと、もう飲む力はないのですから、むせたりして、かえって苦しい目にあわすことになります。私の父の十四代裏千家家元は、旅行先の北海道の宿で急逝しましたので、肉親は死に目に会えませんでした。長わずらいで看病した場合は、それなりの覚悟ができていますが、急死の場合は悲しさはひとしおです。私は、せめて死水だけでもとりたかったと嘆き悲しみました。
婚約解消で正当な理由がない場合は、相手に対して損害賠償を請求することができます。一般的に正当な理由となるのは、?著しく経歴を詐称していた、?異性関係が他にもあった、?悪性の病気があった、?ひどい侮辱や虐待を受けた、?将来、一緒に生活していく自信が持てないほど冷酷で不誠実――などです。損害賠償の対象となるのは、婚約に直接関係している財産と精神上のすべてです。したがって婚約披露の費用、結婚の準備として使った費用、仲人への謝礼金、結婚のために仕事をやめた場合の損害、ショックで病気になった時の治療費などです。また、精神的苦痛に対する慰謝料も請求できます。なお、双方の話がこじれてしまい、収拾がつかなくなった場合は、家庭裁判所に申し立てることもできます。
フランソワ一世とアンリ二世の父子二代の寵妃としてもろもろの交際術、とりわけ恋愛作法を身をもって示したディアンヌ・ドゥ・ポワチエ夫人。これら王宮をとりまく美しい貴婦人たちが宮廷内のエティケットを磨き上げ、一般社会の人々も争ってこれを模倣したのである。その極めっきが、かの有名なマリー・アントワネット。彼女はヨーロッパ屈指の名門、オーストリアのハプスブルグ家の王女として女帝マリア・テレジアに育てられ、ルイ十六世に嫁いだ。彼女は贅沢の限りを尽くし、最期は革命軍に捕われて処刑されたが、その文化的貢献を見逃してはなるまい。グルメの王妃は、絶妙の芸術品ともいうべきワインと、人工の極致と評価されるフランス料理との組み合わせを成功させた。彼女はまたハンカチーフの形を制定した人でもある。ハンカチーフはそもそも紀元前三千五十年ごろのエジプトの王女ダシュールの墓から発見されている。精巧な麻の小ぎれで、身だしなみとして装飾として王家の女たちの間で愛用されていたとみられる。十七世紀のヨーロッパ各国の上流夫人たちは、流行した嗅ぎたばこをさまざまなハンカチーフに包んで胸に飾り、手にした。ヴェネチア、ブリュッセルなどで豪奢な手製レースが作られ、貴婦人たちはそれを競いあった。